温泉地の数で全国No.1を誇るのが北海道です。しかもこれ、一時的なブームではありません。環境省が統計を取り始めて以来、ずっと首位の座を守り続けているのです。
その代表格が、9種類もの泉質が湧き出す「温泉のデパート」こと登別温泉。なぜこれほど北海道に温泉が集まったのか、その理由から、実際に訪れて楽しむ方法まで、じっくり紹介していきます。
北海道が温泉地日本一である理由
まずはデータから見てみましょう。
環境省「令和6年度温泉利用状況」(令和7年3月末現在)によると、北海道の温泉地数は226カ所で全国1位。2位の長野県(193カ所)に33カ所の差をつけ、3位の新潟県(135カ所)にはほぼ100カ所近い大差です。日本温泉協会がまとめた過去の調査でも、北海道は常にトップの座を守っており、まさに「温泉大国」と呼ぶにふさわしい存在です。
では、なぜこれほど北海道に温泉が集中しているのでしょうか。
理由のひとつは、地質です。北海道には、太平洋プレートの沈み込みによって形成された千島弧・東日本火山帯が重なり合うように連なっており、大雪山や十勝岳、有珠山、樽前山など今も活動する火山が数多く存在します。この活発な火山活動が、地下深くのマグマだまりを熱源として各地に温泉を湧き立たせているのです。
もうひとつの理由は、単純な面積の広さです。北海道の面積は全国の約22%を占める広大さで、その中に支笏洞爺国立公園や阿寒摩周国立公園など火山地帯を含む多彩な地形が点在しています。「広い土地に、活発な火山がまんべんなく分布している」——この地の利の掛け合わせこそが、温泉地数日本一を生み出した最大の理由といえるでしょう。
代表的なスポット紹介:登別温泉

数ある道内の温泉地のなかでも、知名度・規模ともに北海道を代表する存在といえるのが登別温泉です。
登別温泉の歴史は江戸時代末期の1858年(安政5年)にさかのぼります。皮膚病に苦しむ妻を伴って湯治に訪れた滝本金蔵は、その効能に驚き、当時道すらなかった登別の地を私費で切り開きました。その後、岡田半兵衛が官営の湯治小屋を設け、1888年には滝本金蔵が「湯もとの滝本」(現在の第一滝本館)を開業。1905年には日露戦争の傷病兵の保養地に指定されたことで、その名は全国に広まっていきました。
登別温泉最大の特徴は、なんといっても泉質の豊富さです。硫黄泉、食塩泉、芒硝泉、緑ばん泉、鉄泉、酸性緑ばん泉、重曹泉、ラジウム泉、酸性泉と、実に9種類もの泉質が一つのエリアに湧出しており、「温泉のデパート」の異名で呼ばれるほど。自然湧出量は1日およそ1万トン、泉温は45〜90度にも達します。
この豊富な湯量の源となっているのが、温泉街の奥に広がる地獄谷です。直径約450mのすり鉢状の谷底には大地獄をはじめ大小15の噴気孔・沸騰泉が点在し、毎分3,000Lもの湯を噴き上げています。その荒々しい景観は北海道遺産にも選定されており、登別温泉の"心臓部"と呼べる存在です。
代表的な体験・アクティビティ

登別温泉を訪れたら、まず歩いておきたいのが地獄谷の遊歩道です。もうもうと立ち上る湯けむりと硫黄の香りに包まれながら、荒々しい大地の息づかいを間近で感じられます。地獄谷から奥に進んだ先には、コバルトブルーに輝く川の水が自然の足湯になっている「大湯沼川天然足湯」もあり、散策の締めくくりにひと休みするのにぴったりです。
夏の風物詩として外せないのが「登別地獄まつり」です。地獄谷から地獄の釜のふたが開き、大鬼王エンマが鬼たちを引き連れて温泉街にやってくる——そんな伝説をもとにした祭りで、毎年8月最終の土曜・日曜に開催されます。重さ1トンの巨大な赤鬼みこしを100人がかりで担いで練り歩く「鬼みこし暴れねりこみ」や、観光客も鬼の面をつけて踊りの輪に加わる「鬼踊り大群舞」など、大鬼王エンマの練り歩きが見られるのは一年でこの2日間だけという貴重な体験です。
このほか、温泉街から徒歩圏内にある「のぼりべつクマ牧場」でヒグマとふれあったり、複数の宿で日帰り入浴を楽しみながら泉質の違いを飲み比べならぬ"湯めぐり"で比較したりと、半日はあっという間に過ぎてしまう充実ぶりです。
人気の宿・周辺エリア
登別温泉で歴史と規模を誇るのが、開湯の立役者・滝本金蔵ゆかりの「第一滝本館」です。1888年創業という長い歴史を持ちながら、館内だけで7種類の泉質を楽しめる湯めぐりが名物になっています。
少し足を延ばせば、札幌の奥座敷として知られる定山渓温泉があります。こちらは1866年(慶応2年)、僧侶の美泉定山がアイヌの案内で発見したのが始まりとされ、渓谷沿いに宿が立ち並ぶ景観が魅力です。札幌中心部から車で約1時間というアクセスの良さから、年間およそ240万人が訪れる一大温泉地に成長しました。登別が「泉質の多様さ」で知られるのに対し、定山渓は「都市近接型の温泉リゾート」として、それぞれ違った個性で道内屈指の人気を誇っています。
さらに周辺まで足を延ばすなら、支笏洞爺国立公園内にある洞爺湖温泉や、北海道三大温泉郷のひとつに数えられる湯の川温泉(函館)もあわせて周遊すると、北海道の温泉の奥深さをより実感できるはずです。
おうちで楽しむなら、ふるさと納税も
現地までなかなか足を運べないという方には、登別市のふるさと納税もおすすめです。寄附の返礼品として、市内の旅館・ホテル・日帰り温泉施設で利用できる「のぼりべつ温泉感謝券」が用意されており、発行日から12カ月間、1枚単位で使うことができます。ふるさとチョイス・楽天ふるさと納税・ふるなびなど主要ポータルサイトで取り扱いがあるので、気になる方はチェックしてみてください。
季節・アクセスのベストタイミング
登別温泉へは、新千歳空港から車・高速バスで約1時間、JR特急とバスを乗り継いでも1時間前後で到着でき、道内の温泉地のなかでもアクセスの良さが際立っています。札幌からも車で約1時間40分ほどです。
四季を通じて楽しめるのも魅力ですが、雪景色のなかで湯けむりに包まれる冬(12〜2月頃)の露天風呂はひときわ格別です。逆に、鬼みこしと鬼踊りで温泉街が熱気に包まれる8月の「登別地獄まつり」に合わせて訪れるのも、登別ならではの体験になるでしょう。
まとめ
北海道の温泉地日本一は、活火山が連なる千島弧・東日本火山帯という「大地の恵み」と、全国の約22%を占める広大な面積という「地の利」が重なり合って生まれた記録でした。
その代表格である登別温泉には、9種の泉質を生んだ地質の豊かさだけでなく、滝本金蔵ら先人が切り開いた開湯の物語、そして大鬼王エンマが練り歩く地獄まつりまで、知れば知るほど「へぇー」とうなずきたくなるエピソードが詰まっています。次に北海道旅行を計画するときは、湯けむりの向こうにあるこうした背景も、ちょっと思い出してみてください。
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