ガソリンの年間支出額で日本一なのが鳥取県です。
数字の裏には、公共交通機関が少なく、車が生活の必需品というこの土地ならではの事情があります。
ではなぜこの数字が生まれたのか、統計データの見方や県内の実情、行政の取り組みまで、じっくり深掘りします。
鳥取県がガソリン年間支出額日本一である理由
総務省統計局の家計調査(二人以上の世帯)によると、2023年から2025年の平均で、鳥取市の1世帯当たりガソリン年間支出額は10万7406円でした。月換算すると約8950円をガソリン代に充てている計算になり、全国の都道府県庁所在市・政令指定都市の中でもっとも高い数字です。
なぜここまでガソリン代がかさむのでしょうか。
背景にあるのは、鳥取県が広い県土に対して人口密度が低く、鉄道網も限定的な地域だという事情です。
加えて、路線バスの縮小や廃止が各地で進んでおり、通勤や買い物、通院といった日常の移動を車に頼らざるを得ない暮らしが定着しています。つまり、ガソリン代が高いというより、車に乗る機会そのものが多い、車がないと生活が成り立たない地域だという方が実情に近いといえます。
「県内トップ」のデータは、実は鳥取市そのもの
グルメやものづくりの日本一記事では、都道府県レベルの日本一のあとに「県内で一番強いのはどこか」を掘り下げるのが定番です。
ところが、ガソリン支出額のような家計調査のデータは、そもそも都道府県庁所在市(鳥取県の場合は鳥取市)を対象に調査したものです。つまり、鳥取市より細かい市区町村単位の公的な支出データは存在せず、「県内トップは鳥取市でした」という以上の深掘りができないのが実情です。
そこで隣接するデータに目を向けると、興味深い数字が見つかります。
全国軽自動車協会連合会がまとめた世帯当たりの軽自動車普及率で、鳥取県は佐賀県に次ぐ全国2位の水準にあります。ガソリン支出額だけでなく、車そのものの保有率でも鳥取県は全国トップクラスというわけです。ガソリン代の高さと軽自動車の普及率の高さは、どちらも「車がないと暮らせない」という同じ土壌から生まれていると考えられます。
関連する行政施策・制度
ガソリン価格の高騰は家計への影響が大きいため、国と地方それぞれで対策が取られています。
経済産業省・資源エネルギー庁は、原油価格の高騰を受けて燃料油(ガソリン・軽油・灯油など)の小売価格を抑える激変緩和措置を実施しています。
鳥取県も独自にガソリン小売価格調査を半年ごとに行い、県内の価格動向を「とりネット」で公表しています。県民が給油のタイミングを判断しやすいよう、価格情報をこまめに発信しているのが特徴です。
さらに市町村レベルでも独自の支援策があります。たとえば伯耆町では、国の重点支援地方交付金を活用し、町内全世帯にガソリン等の購入やタクシー利用に使える助成券を配布しています。こうした市町村単位のきめ細かな対応も、車社会ならではの取り組みといえます。
暮らしのリアル
鳥取県では、路線バスの廃止や減便のニュースがたびたび話題になります。廃止予定だった路線が前倒しで運行終了になる例もあり、公共交通を前提にした生活設計が難しい地域だという実感が県民のあいだに広がっています。
一家に一台どころか、家族の人数分だけ車を持つ世帯も珍しくありません。通勤用と買い物用で車を使い分ける家庭もあり、維持費を抑えるために軽自動車を選ぶ世帯が多いことも、先ほどの軽自動車普及率の高さにつながっています。
高齢になって運転免許を返納したあとの移動手段の確保も、鳥取県に限らず車社会の地方が共通して抱える課題です。ガソリン支出額日本一という数字は、単なる家計の話にとどまらず、地域の交通インフラのあり方そのものを映し出しているといえます。
まとめ
鳥取県のガソリン年間支出額日本一は、県土の広さや人口密度の低さ、公共交通機関の縮小という土地の物語と、家族総出で車を使い分ける暮らしぶりという人の物語が重なって生まれた数字です。ガソリン代の高さの裏にある車社会の実情を知ると、鳥取県の暮らしがより身近に感じられるのではないでしょうか。
✅出典
・家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(2023年〜2025年平均)|総務省統計局
・鳥取県における自家用車の普及率|TOTTORI BUSINESS ONLINE
・軽自動車の世帯あたり保有台数|全国軽自動車協会連合会
・中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置|経済産業省 資源エネルギー庁
・鳥取県内のガソリン価格はいくらですか|とりネット/鳥取県公式サイト
・ガソリン小売価格調査(半年毎実施)|とりネット/鳥取県公式サイト
・第7回ガソリン等購入助成券配布事業(1世帯2万円)|伯耆町公式ウェブサイト
