3世代同居率で日本一なのが山形県です。
令和2年国勢調査によると、山形県の3世代同居率は13.9%で全国1位。全国平均4.2%の3倍以上という数字の裏には、農業県ならではの暮らし方と、共働きを支え合う家族のかたちがあります。
なぜこの数字が生まれたのか、県内トップの町の実情、行政の取り組みまで、じっくり深掘りします。
山形県が3世代同居率日本一である理由
総務省統計局の「令和2年国勢調査」によると、山形県の3世代同居率は13.9%で全国1位です。全国平均は4.2%なので、実に3.3倍の水準にあります。しかも、この1位は2000年の調査から5回連続、さらにさかのぼると平成2(1990)年の調査からずっと1位を守り続けているとされ、県の特色として30年以上定着した数字といえます。
なぜこれほど3世代同居率が高いのか。理由は大きく2つに整理できます。
1つ目は、農業県ならではの土地柄です。
3世代世帯の割合は、米の作付面積率や農業就業人口の割合と正の相関があるとされ、農業が盛んで人口がまばらな地方ほど3世代同居が多い傾向にあります。
山形県は庄内平野をはじめとする稲作地帯を抱え、田畑や家業を親子で受け継ぐ暮らし方が根付いてきました。あわせて、日本海側や東北地方は1世帯当たりの延べ床面積が広い県が多く、複数世代が一つ屋根の下で暮らせるだけの住宅事情もそろっています。
2つ目は、共働きを支え合う家族のかたちです。
3世代同居率は共働き率とも正の相関が高いとされ、祖父母が孫の面倒を見ることで、母親が働きに出やすい環境が生まれています。山形県も実際に共働き世帯の割合が高い県のひとつで、「同居する祖父母が子育てを支える力になる」という考え方は、県のこども子育て政策課が公式に打ち出している方針でもあります。
平成25年の内閣府の意識調査では、子育てや家事に祖父母の手助けがあった方が望ましいと答えた人が約8割にのぼり、山形県内では核家族世帯よりも3世代同居世帯の方が実際に持つ子どもの数が多くなる傾向も確認されています。
県内トップは金山町でした
山形県内でも、市町村ごとに3世代同居率には大きな差があります。
国勢調査(平成27年)の市区町村別データをもとにすると、県内トップは最上地方の金山町で36.2%。
これは山形県内だけでなく全国の市区町村でも1位の水準です。2位は同じ最上地方の鮭川村で35.5%、以下、戸沢村(32.8%)、川西町(31.4%)、舟形町(30.7%)、大蔵村(30.7%)、大石田町(30.1%)、飯豊町(29.7%)、最上町(29.0%)と続きます。
上位10町村のうち7つを最上地方・置賜地方の農山村が占めており、県庁所在地の山形市のような都市部に比べて、郡部で三世代同居が色濃く残っていることがわかります。
金山町は山形県北部、最上地方に位置する人口約4900人の小さな町です。町土の約8割を山々が占め、農林業が主要産業という土地柄で、3世代同居率の高さとも重なります。
町のもうひとつの顔が、「街並み100年運動」で知られる景観づくりです。
金山杉を使った白壁・杉板張り・切妻屋根の「金山住宅」が立ち並び、石造りの農業用水路を錦鯉が泳ぐ町並みは、観光よりも暮らしという言葉が似合う落ち着いた雰囲気を保っています。
樹齢250年を超える金山杉の美林も点在し、林業と結びついた地域の暮らしが、家や土地を世代で受け継ぐ文化を後押ししてきたと考えられます。
2位の鮭川村も同じ最上地方の農村で、名前のとおり鮭川が流れる自然豊かな村です。上位に並ぶ町村の多くが、稲作や林業を中心とした第一次産業の色が濃い地域である点は、県全体の3世代同居率の背景要因ともきれいに重なります。
関連する行政施策・制度
山形県は、3世代同居・近居を「子育てを支える力」のひとつと位置づけ、県レベルでいくつもの取り組みを進めています。
3世代家族の絆や暮らしぶりを広く知ってもらうため、平成27年度から30年度にかけて「3世代家族写真(・エピソード)コンテスト」を実施したほか、祖父母世代に向けて最近の子育て事情をまとめた「孫育てのススメ」というガイドも公開しています。
住宅面では、3世代同居・近居のための住宅取得・新築・リフォーム工事に対する助成制度を用意しており、県内の住宅情報サイト「タテッカーナ」で詳細を確認できます。
県全域を対象にしたリフォーム補助では、バリアフリー改修や断熱工事、省エネ設備の設置などに工事費の5分の1(上限24万円)を補助し、移住・新婚・子育て世帯であれば3分の1(上限30万円)まで補助率が上がる仕組みです。
市町村ごとの上乗せ支援も充実しています。
西川町では、3世代世帯や近居世帯、新婚世帯、多子世帯が対象となる工事の場合、工事費の20%(上限40万円)を補助する制度があり、一般世帯向けの補助よりも手厚い内容です。
鶴岡市でも、市内業者を利用したリフォーム工事への助成に加え、移住世帯や子育て世帯が空き家を取得した場合の上乗せ助成を用意するなど、各自治体が「家をつないでいく暮らし」を後押ししています。
暮らしのリアル
3世代同居のメリットについて、山形県が実際の同居家庭に尋ねた調査では、「一緒に暮らすことによる安心感」「祖父母による子どもの見守り」「育児や家事の知恵を教えてもらえる」「食費・光熱水費の節減」といった声が上がっています。
子育てと介護の両方で支え合える安心感は、数字だけでは見えてこない暮らしの実感といえるでしょう。
一方で、異なる世代が一緒に暮らすからこその気配りも欠かせません。
同じ調査では「自分の基準を押し付けない」「プライベートな時間を持てるように配慮する」「家事の役割分担のルールを決めておく」といった工夫も挙げられており、3世代同居は自然にうまくいくものではなく、家族それぞれの気遣いのうえに成り立っていることがうかがえます。
また、山形県は同居だけでなく「近居」という選択肢もあわせて提案しています。
親元に近い距離に住み、日頃はほどよい距離感を保ちながら、いざというときには助け合う暮らし方です。住宅事情やライフスタイルの多様化で同居が難しい家庭にとっても、3世代同居率日本一の県が積み重ねてきた知恵は参考になりそうです。
まとめ
山形県が3世代同居率日本一である背景には、農業県ならではの土地柄・住宅事情と、祖父母が子育てを支えることで共働きを後押しする家族のかたちがありました。
県内でもっとも3世代同居率が高いのは、街並み100年運動と金山杉で知られる最上地方の金山町。僅差で続く鮭川村をはじめ、上位には最上・置賜地方の農山村が並びます。県や市町村も、住宅取得・リフォーム補助や子育て支援を通じて、この「家をつないでいく暮らし」を次の世代へと後押ししています。
数字の1位だけでなく、その裏にある土地柄や家族の気遣いまで知ると、山形県という土地の見え方が少し変わってくるのではないでしょうか。
✅出典
- 令和2年国勢調査 人口等基本集計結果 結果の概要(総務省統計局)
- 山形県の3世代同居率日本一 20年国勢調査、00年から5回連続(河北新報オンラインニュース)
- 考えてみませんか?三世代同居・近居の暮らし(山形県 しあわせ子育て応援部)
- 住宅(支援制度等)(山形県 建築住宅課)
- 3世代世帯の割合の統計(平成27年国勢調査)(town-lab.)
- ホーム/四季奏でるまち。金山(山形県金山町公式ウェブサイト)
- 西川町住宅建築支援事業(山形県移住交流ポータルサイト やまがたごこち)