電気代の年間支出額で日本一なのが福井県です。
数字の裏には、寒暖差の大きい気候と、北陸ならではの住宅事情・オール電化率の高さがあります。
なぜこの数字が生まれたのか、統計データの見方や県内の実情、行政の取り組みまで、じっくり解説します。
福井県が電気代日本一である理由
総務省統計局の家計調査(二人以上の世帯)によると、2023年から2025年の平均で、福井市の1世帯当たり電気代年間支出額は21万5694円でした。
単年の2024年データでみても20万1412円で、全国の都道府県庁所在市・政令指定都市のなかで唯一20万円を超え、2位の富山市(19万6906円)に約5000円の差をつけて全国トップです。
意外なことに、福井県は電気の「単価」自体が特別高い地域ではありません。
それでも支出額が突出するのは、使用量そのものが多いためです。理由は大きく2つに整理できます。
1つ目は気候です。
福井市は夏に38度を超えることもある蒸し暑さと、冬は氷点下まで冷え込む厳しい寒さを併せ持つ、寒暖差の大きい地域です。日本海側気候の影響で雪も多く、冷房と暖房の両方をしっかり使う期間が長くなります。
2つ目は住宅事情です。
福井県の1住宅当たり延床面積は135.66㎡で全国2位(全国平均は90.86㎡)。部屋数が多い分、照明やエアコンの台数も増えます。
さらに北陸地方はオール電化住宅の普及率が約25%と、全国平均(約11%)の2倍以上。ガスを使わず給湯や調理まで電気でまかなう家庭が多いことも、電気代を押し上げる要因になっています。
「県内トップ」のデータは、実は福井市そのもの
グルメやものづくりの日本一記事では、都道府県レベルの日本一のあとに「県内で一番強いのはどこか」を掘り下げるのが定番です。
ところが、電気代のような家計調査のデータは、そもそも都道府県庁所在市(福井県の場合は福井市)だけを対象に調査したものです。つまり、福井市より細かい市区町村単位の公的な支出データは存在せず、「県内トップは福井市でした」という以上の深掘りができないのが実情です。
そのかわり、興味深いのはランキング全体の顔ぶれです。
2024年データでは、1位が福井市(20万1412円)、2位が富山市(19万6906円)、そして4位に金沢市(18万5084円)と、上位4都市のうち3つを北陸勢が占めました。気候も住宅事情もよく似た3県が、そろって電気代トップクラスに入っているわけです。
関連する行政施策・制度
電気代の高さは行政も無視できない課題です。
福井県では、電気・ガス価格の高騰を受けた「電気・ガス価格高騰緊急対策給付金」を実施しており、2026年1〜3月期分も家庭・事業者向けに支給される予定です。一般家庭は申請不要で、電気・都市ガスを利用していれば自動的に負担軽減が適用される仕組みになっています。
また、オール電化住宅が多い地域性を踏まえ、北陸電力は夜間の電力量料金を割安にするプラン(くつろぎナイト12など)を用意しています。日中と夜間で料金差のあるプランをうまく使うことも、実質的な負担軽減につながります。
暮らしのリアル
福井県といえば、電気代だけでなく暮らしにまつわる「日本一」がほかにもあります。
令和2年(2020年)の国勢調査によると、福井県の共働き率は61.2%で全国1位。女性の就業率・労働力率も全国トップクラスです。背景には三世代同居や近居で子育てを支え合う文化、車社会で通勤しやすい環境などがあり、共働きで日中家を空けにくい世帯が多いぶん、朝晩や休日に家族そろって過ごす時間が長くなりやすいことも、家庭での電力使用量を押し上げる一因と考えられます。
さらに、福井市は家計調査で総菜の購入額も全国トップクラスという結果が出ています。
共働き世帯が多く、家で過ごす時間も長いからこそ、できあいの総菜を上手に取り入れる暮らし方が根づいているようです。電気代の高さは、裏を返せば「家で過ごす時間を大切にする」福井らしい暮らし方の表れともいえそうです。
まとめ
福井県の電気代日本一は、夏冬の寒暖差が大きい気候、全国屈指の広さを誇る住宅、北陸ならではの高いオール電化率という「土地の物語」と、共働き率日本一で家族が家で過ごす時間を大切にしてきたという「人の物語」が重なって生まれた数字です。
単価は高くないのに支出額だけが突出しているという意外性も含めて、数字の裏にある暮らしぶりまで知ると、ただのランキングでは終わらない奥行きが見えてきます。
✅出典
- 総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(2023年〜2025年平均)」(stat.go.jp)
- ねとらぼリサーチ「『電気代を多く払っている都市』ランキングTOP30! 第1位は『福井市』【2024年度版】」(e-Stat「家計調査」2024年データより)(nlab.itmedia.co.jp)
- 総務省統計局「福井を支える女性たち 広い家に住む福井の人々」(都道府県別1住宅当たり延床面積)(stat.go.jp)
- 福井県「電気・ガス価格高騰緊急対策給付金(令和8年1月〜令和8年3月期分)」(pref.fukui.lg.jp)
- 福井県「令和2年国勢調査」(共働き率61.2%、全国1位)(pref.fukui.lg.jp)
- 福井新聞ONLINE「福井市民は家ごもり好き?…電気代支出額が全国トップ 一方で化粧クリームや整髪剤は最下位」(fukuishimbun.co.jp)
