国宝・重要文化財(建造物)の指定数で全国トップに立つのは、そうです!京都府です。しかも、その差はちょっとやそっとではありません。
「国宝や重要文化財が多い都道府県」と聞くと、京都府を思い浮かべる方は多いはずです。実際その予想は正解なのですが、驚くのはここからです。
文化庁の集計によると、建造物の棟数ベースで見た京都府と2位・奈良県の差は、実に約1.5倍。奈良の法隆寺や東大寺と肩を並べるどころか、大きく突き放しているのです。
ではなぜ京都府がここまで突出した1位に立っているのか。理由を紐解くと、平安京以来1000年にわたって都であり続けた歴史そのものに行き着きます。府内で真に集積が進んでいる街、代表的な社寺、実際に巡る際のおすすめルートまで、じっくり深掘りします。
京都府が国宝・重要文化財(建造物)日本一である理由
まずはデータから見てみましょう。
文化庁の集計(2019年2月1日時点)によると、京都府の国宝(建造物)は51件・72棟、重要文化財(建造物)は299件・663棟。合計すると350件・735棟にのぼります。
2位の奈良県は国宝64件・71棟、重要文化財264件・403棟の合計328件・474棟で、件数ではわずかな差ですが、棟数で比べると京都は奈良の約1.5倍という大きな差がついています。
より新しい2024年4月時点の報道集計(ねとらぼリサーチ、文化庁データ引用)でも、京都府の建造物は303件で全国トップと紹介されており、集計時点や「件・棟」どちらで数えるかによって具体的な数字には幅があるものの、どの集計でも京都府が首位という結果は一貫しています。
では、なぜ京都府がこれほど突出しているのでしょうか。理由は大きく2つあります。
一つめは、平安京遷都(794年)から明治維新まで1000年以上にわたって都であり続けたことです。
都には皇室・公家・有力な寺社が集まり、当時の権力者による建造物への継続的な投資が行われました。一時的に都が置かれた土地ではなく、1000年単位で富と信仰が積み重なった土地だからこそ、指定文化財の"母数"そのものが桁違いに大きいのです。
二つめは、戦災を免れた地理的な幸運です。
応仁の乱(1467〜1477年)で市街地の多くは焼失しましたが、高山寺や醍醐寺など山間部・郊外の古刹は戦火を免れました。さらに第二次世界大戦では、文化財保護を理由の一つとして京都が米軍の空襲対象から外れたとされ、他都市に比べて戦災による焼失を免れた建造物が多く残ったことも、今日の指定数の多さにつながっています。
代表的な社寺・史跡:東寺・清水寺、そして府内No.2の集積地は宇治市

京都府内の指定文化財を代表する建造物を見ていきましょう。
まず象徴的なのが、教王護国寺(東寺)の五重塔(国宝)です。
現在の塔は1644年(寛永21年)に徳川家光の寄進で再建されたもので、高さは約55メートル。現存する木造塔としては日本一の高さを誇ります。弘法大師空海が唐から持ち帰った仏舎利が納められているとも伝わり、京都駅からもほど近い、まさに古都のシンボルです。
清水の舞台で知られる清水寺本堂も国宝です。
急な崖に張り出す「懸造り」という伝統工法で建てられ、釘を一切使わない構造として知られています。江戸時代初期(1633年)の再建ながら、平安時代以来の姿を今に伝えると評されています。
徳川家の京都における拠点だった二条城の二の丸御殿も国宝で、大政奉還の舞台となったことでも知られます。金閣寺(鹿苑寺)・銀閣寺(慈照寺)とあわせて、いずれもユネスコ世界文化遺産「古都京都の文化財」の構成資産です。
ここで意外なのが、京都府内で京都市に次ぐ集積地です。
「古都京都の文化財」は17の社寺・城と198棟の建造物、12の庭園で構成される世界遺産ですが、このうち14件が京都市内である一方、2件は宇治市に所在します。平等院(鳳凰堂は国宝)と、現存する日本最古の神社建築とされる宇治上神社(国宝)です。京都市以外で世界遺産構成資産を2件も抱える宇治市は、府内で京都市に次ぐ突出した集積地といえます。
地域の祭り・行事との関わり
指定文化財の建造物は、単なる「古い建物」ではなく、今も続く祭礼の舞台であることが少なくありません。
例えば、世界遺産の構成資産でもある賀茂別雷神社(上賀茂神社)・賀茂御祖神社(下鴨神社)は、京都三大祭のひとつ「葵祭」(賀茂祭)の舞台。
現存する日本最古の祭りともいわれ、起源は約1500年前の欽明天皇期にさかのぼると伝わります(詳しくは別記事「現存する日本最古の祭り 日本一は葵祭(京都府)」で深掘りしています)。指定文化財の建造物と、そこで受け継がれる祭礼行事は、京都では切っても切り離せない関係にあるのです。
巡るならこのルート(豆知識も交えて)
実際に指定文化財の建造物を巡るなら、次のような流れがおすすめです。
京都駅を起点にするなら、まずは徒歩圏内の東寺(五重塔・国宝)へ。
次に市バスや電車で清水寺へ移動し、清水の舞台と本堂を見学します。少し足を延ばすなら、JR奈良線・京阪電鉄で宇治へ向かい、平等院鳳凰堂と宇治上神社をあわせて巡るコースも、建造物の"格"を追う定番ルートです。
拝観料の目安は、東寺の五重塔初層公開時(春・秋の特別公開期間のみ)で約500円(税込・執筆時点)、平等院は境内拝観料約600円・鳳凰堂内部拝観は別途約300円(いずれも税込・執筆時点)です(拝観料・特別公開の有無は変更されることがあるため、訪問前に必ず公式サイトで最新情報を確認してください)。
訪れるなら、紅葉・新緑の季節はどのスポットも混雑が予想されるため、朝一番の時間帯を狙うのがおすすめです。
特に平等院鳳凰堂は、内部拝観が定員制・時間指定であることが多いため、事前予約の可否を確認しておくと安心です。
まとめ
京都府が国宝・重要文化財(建造物)で全国トップに立ち続けているのは、1000年続いた都という「土地の物語」と、応仁の乱・戦災を免れた「幸運の物語」が重なり合った結果でした。
「京都=文化財が多い」という予想は正解でも、その差が2位・奈良の約1.5倍にのぼることや、日本一高い木造塔が東寺にあること、そして京都市以外にも宇治市という隠れた集積地があることまで知っている人は、意外と多くないのではないでしょうか。
次に京都を訪れる際は、東寺の五重塔を見上げながら、その"高さ日本一"という肩書きを思い出してみてください。
✅出典
- 都道府県別指定等文化財件数(都道府県分)|文化庁
- 【47都道府県】国宝・重要文化財の保有数・保有率ランキング|kunitori-jp.net
- 「国宝・重要文化財が多い都道府県」ランキングTOP30!|ねとらぼリサーチ
- 都道府県別国宝・重要文化財数(建造物)|とどラン
- 世界遺産「古都京都の文化財(京都市、宇治市、大津市)」|京都市公式
- 東寺 五重塔|東寺公式サイト
Image:京都フリー写真素材