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【都道府県ランキング】医療機器生産金額1位は栃木県!大田原市の医療機器王国

2026年7月5日

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【都道府県ランキング】医療機器生産金額1位は栃木県!大田原市の医療機器王国

医療機器の生産金額で日本一を誇るのが栃木県です。その中心を担うのが、那須野が原に広がるまち、大田原市。全国の医療機器生産額のうち12.3%、実に8分の1近くがここで作られています。世界に目を向けても、この地で作られたCTやMRIは150以上の国・地域の病院に届けられており、"世界中の医療現場を支える縁の下の医療機器王国"といえる存在です。なぜ、東京でも大阪でもなく栃木県の一都市に、これほどの医療機器産業が集積したのでしょうか。歴史をひもとくと、およそ100年前、「日本のエジソン」と呼ばれた人物が興した会社がX線管の研究に着手したところまでさかのぼる物語がありました。生産拠点の中心地、代表する製品、そして今の技術トレンドまで、じっくり深掘りしていきます。

栃木県が医療機器生産日本一である理由

厚生労働省「薬事工業生産動態統計調査」(基幹統計、令和6年〈2024年〉年報)によると、医療機器の生産金額(国内製造業者が最終製造工程を行った実績、製造業者の所在都道府県ベース)で全国1位は栃木県。3283億9961万円で、構成比は12.3%にのぼります。

2位は静岡県で2955億888万円(11.1%)、3位は茨城県で2329億4767万円(8.7%)、4位は埼玉県で1462億3913万円(5.5%)、5位は愛知県で1422億9636万円(5.3%)と続きます。全国合計は2兆6641億5677万円ですから、栃木県はおよそ8分の1のシェアを1県だけで占めている計算です。

驚くのは、これが独り占めではないものの、決して一時的な数字ではないという点です。2019年の調査方法変更によって、医療機器の生産金額は「製造業者の所在都道府県」に計上される方式へと統一されました。それまでの調査(製造販売業者の所在地ベース)では、本社機能が集まる東京都が1位に見えることが多かったのですが、実際にモノを作っている拠点で数えると栃木県が最大なのです。そしてこの結果を裏づけるように、栃木県内では大田原市に、今から100年近く前から医療機器づくりの歴史を積み重ねてきた企業の生産拠点が根を張っています。

生産拠点の中心は大田原市。始まりは「日本のエジソン」が興した会社でした

栃木県内で医療機器製造の中核を担っているのが大田原市です。同市にはキヤノンメディカルシステムズ株式会社の本社・那須事業所があり、X線診断システムやCTシステム、MRIシステム、超音波診断システム、放射線治療装置、検体検査システムなど、幅広い医療機器を開発・製造しています。

この物語の始まりは、意外にも医療とは無縁に思えるところにあります。明治時代、白熱電球の国産化に人生をかけ「日本のエジソン」と呼ばれた藤岡市助という技術者がいました。藤岡が1890年に興した「白熱舎」は、1899年に「東京電気」へと名を改めます。そして1914年、この東京電気がX線管の研究に着手したことこそが、今につながる医療機器づくりの出発点でした。翌1915年には日本で初めてX線管の試作に成功し、以後も蛍光板や心電計、断層撮影装置など「日本初」の技術を次々と生み出していきます。

1930年には東京電気の全額出資で「日本医療電気株式会社」が設立され、X線や医用機器の販売を専業に手がける会社として歩み始めました。その後、東芝医療電気、東芝放射線、東芝メディカルと、時代とともに幾度も社名を変えながらも技術を磨き続け、1978年には日本初となる全身用CTスキャナーの開発に成功しています。

そして1979年、栃木県大田原市に工場が完成し、操業を開始しました。京浜地区では工場敷地の拡大が難しくなっていた当時、広大な敷地を確保できたことが大きな理由の一つだったといわれています。自然豊かな環境は、開発に専念するうえでもメリットとなりました。以来、2000年には那須へ拠点が集結し、2009年には東京都文京区に分かれていた本社機能も大田原市へ統合。名実ともに「グローバル本社」となりました。

2016年、東芝はこの事業の全株式をキヤノンへ売却し、東芝グループから離脱。2018年に社名を「キヤノンメディカルシステムズ株式会社」へと改め、現在にいたります。100年以上前のX線管研究から数えると、実に一世紀を超える技術の積み重ねの末に、大田原市は国内トップシェア、世界150以上の国・地域で使われる医療機器の一大生産拠点へと育ったのです。現在は大田原をグローバル本社として、世界3か所に研究開発拠点、4か所に製造拠点を構えています。

代表製品紹介

大田原生まれの製品の中でも象徴的なのが、2007年に発売されたCT「Aquilion ONE」です。世界初となる320列エリアディテクターCTとして、1回転わずか0.275秒で160mmという広い範囲の3D画像を撮影できるようにしました。従来の形態診断だけでなく、機能診断や動態観察まで可能にした点が、世界中の医療施設から高く評価されています。

2017年発売の「Aquilion Precision」は、世界初の高精細CTです。細かな血管や骨の構造まで鮮明に描き出すことができ、より精密な診断を支えています。

MRIの分野では「Vantage Galan 3T」シリーズが代表格です。特筆すべきは、検査時の騒音を大幅に低減する独自の「ピアニッシモ技術」を搭載している点。一般的なMRI検査はジェット機並みの騒音がするため耳栓が欠かせませんが、この技術は騒音を90%カットし、耳栓なしでも検査を受けられるほど静かです。「御社のMRIは静かで感動しました」と、患者から直接会社に連絡が入ることもあるといいます。

このほか、超音波診断装置「Aplioシリーズ」や、病院内外の医療情報を統合する医療情報システムまで、画像診断機器の開発から製造、販売、サービスまでを一貫して手がけているのが特徴です。

技術のトレンド

キヤノンメディカルシステムズが掲げるスローガンは「Made for Life」。患者のために、そしてともに歩むために、という理念のもと、AIを活用した画像診断支援やワークフローの効率化など、最先端技術を取り込んだ製品開発が続いています。次世代CTとして期待される「フォトンコウンティングCT」の早期実用化に向けては、世界中の医療機関や大学との共同研究も進められています。

2023年には本社敷地内に、血管撮影装置のショールームと製品安全試験センターという二つの新施設が完成しました。製品安全試験センターには電波暗室やシールドルーム、大型・中型の恒温槽などが備えられ、これまで一部の試験を外部施設に頼っていた超音波診断装置などについても、基本的にすべて社内で試験できる体制が整いました。世界中の病院に届けられる医療機器の安全性を、地元・大田原の拠点で作り込んでいるのです。

一般公開の施設はないけれど、街とはこんな形でつながっている

キヤノンメディカルシステムズの製品は病院向けの専門機器のため、鯖江の眼鏡や栃木のいちごのように、誰でもふらりと立ち寄れる直売店や工場見学コースがあるわけではありません。ただし、地域とのつながりは決して薄くありません。

本社敷地内では、従業員とその家族、近隣の小学校にも参加を呼びかけた「いきもの観察会」を定期的に開催しており、自然豊かな那須野が原の生き物とふれあう機会をつくっています。地域の伝統行事「与一まつり」への協賛や、県内での植林活動、学生の工場見学受け入れなど、地域貢献活動にも力を入れています。

もしあなたが病院でCTやMRIの検査を受けたとき、その機器に「Canon」のロゴを見つけたら、それはもしかすると、この大田原市で作られたものかもしれません。同社の代表取締役社長も「病院で検査を受けるときにキヤノン製だと気づいてもらえればうれしい」と語っています。

まとめ

栃木県、そして大田原市が医療機器生産で日本一であり続けているのは、単なる偶然ではありません。白熱電球の国産化に情熱を注いだ「日本のエジソン」藤岡市助が興した会社が、1914年にX線管の研究に着手したところから始まり、幾度の社名変更と技術革新を経て、世界150以上の国・地域に製品を届ける医療機器メーカーへと育った、100年以上に及ぶ"人の物語"の積み重ねです。次に病院で検査を受けるとき、その機器がどこで、どんな技術者たちの手によって作られたものか、ふと思いをはせてみてはいかがでしょうか。

出典

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