牛肉の年間支出額で日本一なのが京都市です。
総務省の家計調査(2023〜2025年平均、都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング)によると、京都市の1世帯あたり年間支出額は36,081円で全国トップに立っています。
しかもこれ、今年たまたま1位だったわけではありません。2位には奈良市、3位には神戸市が僅差で続いており、上位はここ数年ずっと近畿勢の顔ぶれで固定されています。牛肉好きの街として、京都市は各種調査でもたびたび全国1位に選ばれる"常連"なのです。
なぜ京都はこれほどまでに牛肉が好きなのか。その理由を紐解くと、明治時代から続く1軒のすき焼き店の物語にたどり着きます。日本一を支えた歴史、地元で愛されるブランド牛、実際に味わえる名店まで、じっくり深掘りしていきます。
京都市が牛肉の年間支出額で日本一である理由
総務省の家計調査によれば、京都市の牛肉への1世帯あたり年間支出額は36,081円。2位の奈良市、3位の神戸市も僅差で続いており、上位はいずれも近畿地方の都市が占めています。
実はこれには、関西と関東で肉食文化そのものが違うという背景があります。
「西の牛、東の豚」と呼ばれる食文化の違いはよく知られており、農畜産業振興機構の調査でも、関西は牛肉、関東は豚肉への支出が目立って多い傾向が確認されています。
すき焼きも肉じゃがも、関西では牛肉を使うのが当たり前。この地域性の中でも京都市がとりわけ強いのは、単なる好みだけでなく、京都に牛肉文化を根づかせた歴史があるからです。
日本一を育てた"すき焼きの老舗"三嶋亭の物語
京都の牛肉文化を語る上で欠かせないのが、寺町三条にある老舗すき焼き店「三嶋亭」です。
創業は明治6年(1873年)。文明開化の波の中、初代・三嶌兼吉が長崎で牛鍋の作り方を学び、京都に戻って店を開いたのがはじまりでした。
当時の京都はまだ肉食に馴染みが薄い土地でしたが、まず小説家や学者といった知識層が興味を寄せ、やがて一般の人々にもその味が広まっていきました。
150年以上にわたって暖簾を守り続ける三嶋亭は、いまも国内外の"通"に愛される、京都のすき焼き文化そのものの生き証人と言えるでしょう。牛肉になじみの薄かった土地に、一軒の店が火をつけ、それが街全体の食文化にまで育っていった。京都市が牛肉支出額日本一の座にあるのは、決して偶然ではなく、こうした人の物語が積み重なった結果なのです。
地元で愛される京都府産ブランド牛「京都肉」「亀岡牛」
京都府には、地元で育てられたブランド和牛もいくつかあります。代表格が「京都肉」です。
昭和61年に京都府と京都肉牛流通推進協議会によって、府内で生産・飼育される黒毛和種のうち、A5・B5・A4・B4等級以上の高品質な牛肉だけが「京都肉」と名づけられました。主な産地は丹波高原で、澄んだ水と豊かな自然環境が良質な肉質を育てています。
JAグループが手がける「京の肉」も、府内で飼養される黒毛和牛のブランドです。
さらに、霧の名所として知られる亀岡盆地で育つ「亀岡牛」は、わずか6戸の農家だけが手がける希少なブランド牛。亀岡特有の濃い朝霧が寒暖差を生み、きめ細かな肉質を育てるといわれています。
京都市民が日常的に食べている牛肉のすべてがこれらのブランド牛というわけではありませんが、地元に根づいたこうした牛肉文化の厚みも、支出額の高さを下支えしていると考えられます。
なお、家計調査の「支出金額」はあくまで購入にかけた金額であり、購入数量(グラム数)とは異なる指標です。
京都市の家庭がブランド牛など単価の高い牛肉を選ぶ傾向があるのか、それとも購入頻度そのものが高いのかは、支出額データだけでは判断できません。すき焼き・しゃぶしゃぶといった「ハレの日」の料理に牛肉を使う機会が多いことも、支出額を押し上げている一因と考えられます。
訪れるならここ、三嶋亭 本店
京都の牛肉文化の原点を味わうなら、三嶋亭の本店(京都市中京区寺町三条)がおすすめです。
創業以来の味を受け継ぐすき焼きは、上質な黒毛和牛と秘伝の割り下が織りなす、まさに"ハレの日"にふさわしい一皿。京懐石やしゃぶしゃぶ、オイル焼きなど、すき焼き以外のメニューも楽しめます。
観光で京都を訪れた際は、寺町京極商店街からもほど近い立地なので、街歩きの合間に立ち寄ってみるのもよいでしょう。
おうちで楽しむなら、ふるさと納税も
現地に足を運べない場合は、京都府亀岡市のふるさと納税返礼品を選ぶ方法もあります。
京都丹波産黒毛和牛の肩ロース(すき焼き・しゃぶしゃぶ用)や、亀岡牛のローストビーフなど、京都府産の牛肉を自宅で味わえる返礼品が複数用意されています。
まとめ
京都市が牛肉の年間支出額で日本一である理由は、「西の牛、東の豚」という関西ならではの食文化と、明治6年創業の三嶋亭がこの地に根づかせた150年におよぶすき焼きの歴史という、地域性と人の物語の両輪で成り立っています。
数字の裏にあるのは、一軒の老舗が街の食文化を変えてきた壮大な物語でした。京都を訪れる機会があれば、ぜひ本場のすき焼きを味わってみてください。
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